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僕ら× 1st.

第7章 伊織帰 --Ior,Kn,Ar

***

俺と柊、伊織の個室が並ぶすじ。
ラボは、俺の部屋の延長にある。
そんなに広くはないが、作業をするのに充分な空間。

ひとまず完成のアルロボの横に、花野仕様1体。

高校に入る前から少しずつ作ってきた。
会えないときも、会えるように。

この花野ちゃんには、俺のためにピアノを弾いてくれるように教えこむ。

「へぇ、すごいな」

大切な用があると言いながら入ってきた柊は、なかなか本題に入らない。
それだけ俺の作った花野ちゃんは、すげぇだろ?

「回路がまだつながんねぇ」

ピアノを潰さないよう力加減をして、スピーディに滑らかに動かす。
ゆくゆくは強弱もつけられるようにしたい。

「なぁ、花野ちゃん、胸ないの?」

「ばっか」

柊は近づいて、マジマジと見つめる。

「もしかしてアソコの穴も?」

「そんなん作ってねぇよ。お前、ホントにエロいな」

でも、知ってる。
こいつがこう言うときは、本気じゃない。
これがこいつなりの慰めかた……。

「ダッチワイフになんねぇじゃん」

膝丈のスカートに手を伸ばす。

「んなもんいらねぇよ、ボケが!おら、スカートめくんなっ!」

俺は今、精密作業中なんだ。
邪魔すんなっ、埃たてんなっ。

ピアノ弾いたり、コーヒー淹れて笑っていてくれたらそれでいいんだ。
定形外の会話もできたら申し分ないけど、そんなプログラム組めるかどうか。

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