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僕ら× 1st.

第9章 トリオ --Shu,Ior

~本條柊side~

5月最後の夜、本條に呼ばれてアルと行くと、そこには珍しくちゃんと服を着た女性がいた。

その顔は見覚えがある。
数あるあのリスト群に入っていた人物の娘。
彩華さんと同じくらいの、年上……22歳だったかな。

「これからヒューミント(人を介した諜報活動)の一員として、お前たちと同じように働いてもらう」と本條は言う。

「今後、面倒を見るように」

そう言って追い払われた。

そんな、夜中に突然渡されても……。

とりあえずリビングに連れていき、話を聞こうと思った。

「名前は?」

「本條千夏です」

え?
アルと俺は顔を見合わせる。

「あの、今夜どちらかのお相手をするように言われています。よろしくお願いします」

そう言って千夏さんは頭を下げる。

「いや、聞いてねぇし」

アルの顔がひきつる。

「困ります。そうじゃないと私、ここから追い出されるから」

ヒューミント、そして、ハニートラップ要員ってことだろうな。
今夜が最終試験か…。

「じゃあ、シたことにしとけば?」

アルはめんどくさそうに言うけれど、俺はもう読めていた。

「明日、検査をすると言われました。私の中に精子があるか」

「はぁ?」

「お願い。あなたたちに悪い話じゃないでしょ?でないと家族が!」

悲痛に彼女は叫んだ。

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