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僕ら× 1st.

第10章 修旅 --Khs,Ior,Mkt

「依田か…、ふうん。宮石ってさ、今まで何人に告白されたわけ?」

「んーと、私が知ってるのは。ヨーダに、栗田先パイに…に、…に、~で、アル先パイと速水!」

私たちの会話を聞きたくなさげな花野は、ゴソゴソと布団に潜り込んでしまった。

その様子をおかしげに見ながら康史が聞いてくる。

「え?あのアル先パイ?今、高2の?鬼畜ゲイ吉坂?」

なぬ?
今、アル先パイを愚弄したな?

「吉坂先パイは違うよ?」

布団からカタツムリのように人差し指を立てた手を出して"ノンノン"と左右に振る。

「違うもんですかっ!あんた、卒業式に大事なボタン貰ったじゃない!」

「貰った?宮石、浮気か?」

「違う違う。アル先パイが花野に渡したのよ」

優しく花野に微笑む先パイを思い出す。
私も握手をしてもらった。

ふと、その手のひらを見つめる。
アル先パイ……。

「それだけだよ。告白なんてされてないから!」

くぐもった声が布団から聞こえる。

「あんた、ばっか?あんなに女子からボタンをもぎ取られていた先パイが、あんたのためにボタンを用意してたのよ?」

先パイは臆病で"好き"と言わなかったんじゃない、言いたくても言えなかったんだ。

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