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僕ら× 1st.

第12章 夏鍋パ --Hzm

「最後になって悪いな」

助手席に移動した依田は「いいえ」と爽やかに答える。

「ご馳走になったうえに、送迎までしていただいて」

「誘ったの俺だし」

妹とリィの2ショットをね、まざまざと見せつけられたくなかったというか…ワンクッション置きたかったんだ。

「俺も、お兄さんみたいな話しやすい兄貴がほしいです」

「本当の兄貴とは口も聞きませんもん」と依田は言う。

「いーよ。伊織みたいな有能な弟が1人くらい増えても問題ない」

「伊織には及びませんよ」

「へぇ、あいつのこと認めてるの?」

「俺が初めて"勝てない"って思った同級生です」

まあ、両親を亡くして親戚のもとで暮らすリィは、人生経験が並より多いかもな。
それにあいつは驚異的な本の虫だし。

「俺は伊織と依田君って似てると思うよ?」

その理知的な人懐っこさもしかり。

「そうですね…好きになったコも同じですし」

あっけらかんと依田は言う。

「それ、俺に言っちゃうの?」

俺をニュートラルとは思っていないだろうに。

「聞いてましたよね?サマフェスの席で」

「聞こえたんだよ」

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