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僕ら× 1st.

第15章 学校祭 --Ar,Shu,Ior

ミュージカルが終わった後、演奏感謝のホット缶コーヒーを持って2人、譜面台をたたんで歩く。

サマフェス後、久々の2人きり第2音。
秋はミュージカルの練習で、この部屋には9人+見学の羽賀が1人いたから。

倉庫にしまった後、一緒にソファでコーヒー缶を傾けてくつろぐ。

「ねぇ、何か僕に弾いてよ。前にここで晄志にしたように」

ちょっとヤキモチやいたんだ。
僕の知らない2人の時間、その音色に、歌声に。

キミは僕にどんな曲をくれる?

「伊織君に?ふふ、いいよ」

と、先程のミュージカルでは時間の都合でカットされた、"人間に戻りたい"って歌を口づさみ立ち上がる。

「その曲なの?」

確かに、これから僕は姿を変えるけど、人間のままでいる予定なのにな。

「違うよー」

クスッと笑って僕をたばかる。

椅子に座り、ピアノの蓋を開けて指を軽く動かすキミに、いつかのようにカメラを構える。

「伊織君も歌ってね」

少し照れながらも受け入れたキミは、前奏を弾きながらニコッと僕に笑いかけるけど、「サビの一節しか僕は知らないよ」と、苦笑する…。

彼女が僕に選んだのは、"If we hold on together"。
あのスノードームオルゴールの曲だね。

始めから歌詞をつけて囁くように歌ってくれる。

険しい道では、癒しの泉に涙を流そう。
暗闇の中にも、心温まる光を感じるよ。
キミがいれば、永遠にだって手が届く。
だから、決してくじけないで。

この曲を選んだのは、キミの第六感?
それともオルゴールの偶然?

込み上げる苦しさの中で、キミに尋ねる。

弾き終わったキミは、はにかんでこう言うの。

「リルフィーの夢が叶いますように」

偽りないキミからのエール。

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