テキストサイズ

僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

「今日はもう遅いから、明日病院行こう。俺がついて行ってやるよ」

できる限りの誠意をもって竹崎に応対する。

「妊娠してたらどうしよう?」

「それはその時考えような」

「え?それってプロポーズ?」

どうしてこいつは、こうやって外すんだ?
これも道化てるってやつなのか?

その時こんな状況下で、俺がフラレた場面がフラッシュバックした。

"あいつよりいい男になるから、後で後悔するよ?"

精一杯、彼女の前で意地をはった。
そうか、真剣になると傷つくのがわかっているから…。

少しだけ、竹崎の心が見えた気がした。

「真面目に言ってるんだ、俺は」

「うん、ありがとう。じゃ、病院に行った後、私のこと抱いて?好きな人に抱かれたいの」

だけど、ここでこう言う竹崎の心は全くわからない。

「好きになってくれる男とシろ」

そう言うと、竹崎は「ふ」と笑った。
塀から背中を外して路地に踏みだすので、俺もついて行く。

「ホント真面目ね、ヨーダは」

「俺はお前と友だちでいたいんだ。引っ越してもさ、お前のこと友だちとして好きだから。いつか会いたいし」

俺から離れてお下品モードを脱ぎ捨てたなら、きっと素敵な彼氏ができるよ。

「やっぱヨーダはいい男ね。花ちゃんは見る目がないわ」

……竹崎を好きになれたらどんなにいいだろう。
このわからず屋の心は…もう宮石をも諦めているというのに…ごめんな。

ネオンがちらつくホテル通りを避けて、俺たちは駅まで歩く。

「社会人になってもお互いフリーだったら、その時はお前のこと好きになるかも」

なんて強気だよな。
大人の俺を竹崎が相手してくれるという保証はないのに。

「ありがとう、約束ね」

「忘れていいよ」

その夜遅くに竹崎から連絡が入る。
病院へは親と行くと。

なら、いいんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ