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僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

「不思議ね。好きな人には奪ってほしいのに、違うと地獄でしかないんだ。嫌な時も濡れるのよ?それは感じてるとかじゃなくって、防衛反応…」

そんなこと言われても俺は…。

少し路地に入った先のブロック塀にもたれて、竹崎は足元の砂を掻く。

「病院には行った?」

チラホラと見える歩行者に気をつけながら、俺はこの場面に相応しい台詞を必死に考えた。

「どうして?」

ザッザッという砂音が止み、竹崎は顔を上げる。

行ってないのか?
もしかして、誰にも言ってないのか?

「そりゃお前が傷ついてないか調べたり、フォローを。感染症だってあるかもだし」

届を出さないにしても、記録は残した方がいい。

「もう時間経ってるし」

みんなでボーリングした日より前のことなのか?

「1回きりか?今は?」

知り合いなのだろうか?
部外者の俺はどこまで聞いていい?

「ヨーダは優しいね。同じ男とは思えない」

……優しくはないよ。
これが宮石だったら、俺は怒り狂ってる。
生きる価値のない犯人を探し出して、法に任せず自ら裁くだろう。
未成年であろうと関係あるか。

俺が出るまでもなく修羅と化した伊織が執行するだろうけれど。

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