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僕ら× 1st.

第17章 水の中 --Khs,Ar,Thk

その後に続くは、これは知ってる!
"プレリュード第7番"。
出所を知らずして有名な曲。

「ありがとう。いい薬です?」

んな題名やないわ。

「あんたでもそんなこと言うんだ」

冗談とは無縁なヤツやと思ってたわ。
てゆーか、本気やな?

「さあて」

ピアノが止むと、吉坂は腰をあげてドアに向かう。

何が"さあて"なんよ。
はしょらずに言いなよ。

「おじゃましまーす」

私、置いてきぼりやん!

いそいそと吉坂は入っていく。

「ねぇ、花野ちゃん。夏休みの予定は?」

そうね、片想い人にとっちゃ長い休みよね。

「特には。家族で旅行に行くくらいです」

そうなのよね。
今年はサマフェスには参加しない。
折れてる花野を舞台には上げられない。

顧問には相談されたけど、部長の私が断った。
花野には何も話していない。

「長いの?」

「2週間くらい。先パイのご予定は?」

「なあぁんも。俺、花野ちゃんと夏祭りに行きたい。花火見に行こうよ」

私のいる前で堂々と誘ってるよ…。

「桃湖はどう?」

いや、デートやろ?

「こいつは行かない」

そりゃ行かないけどさ。

「柊の野郎は女とだしさ。俺、彼女いねぇし。花野ちゃんつきあって?2人で行こ?」

「先パイ、そこまでしていただかなくてもいいですよ。私、もう立ち直ってますから。それに、誰かに見られたら誤解されちゃいます」

これは吉坂、キツイな……。

「俺が立ち直ってない。誤解なんて気にすんなよ。変なこと言うヤツがいたら俺に言え?守ってやるよ」

性格はともかく、こんなカッコいい男から"守ってやるよ"なんて言われたら、嬉しいよね?

「誤解はダメです。先パイ、他の人を誘ってあげてください」

ピシッと言い切る花野に、吉坂は苦しそうに目を細める。

謹んでご同情申し上げます…。

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