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僕ら× 1st.

第3章 2人の証 --Ior,Hzm

詳しく聞きだそうと思っていたのにアルは、"好きだよハニー"と歌いながら道場を飛びだしていった。
何て恥ずかしいヤツ…。

それにしても、泣いてたピアノを弾く女のコって…。

リィ不在のせいで心なしか生気のない妹が涙を流すところは見ていないが、学校ではどうなんだろう?
孤独な音楽室で、ひとり泣いたこともあるかもしれない。
あの頃のように…。

俺たちとリィの両親は海外出張の公演先で、不運としかいえない崩落事故に巻きこまれた。
生存者4名のなかに、入りそこねた。

でも、両親の最期に同じ空気を吸い、音を楽しみ、通りすがりでも顔をあわせたであろう生存者らがいてくれたのは、せめてもの救いだと誰かが言っていた。

突如として生命を断たれた両親。
残された俺たち。

どちらが辛いかなんてわからないが、生きながらにして身をえぐられるような感覚を体験した。
幼く優しくて甘えっコの妹ならなおさら。

というか、悲しむ妹に何もできない無力感、あんなものは二度と味わいたくない。

夏休みに入る前、妹はリィの身を案じてお守りを探していた。
毎日、つながる空に祈ってるんだろう。

アルが見初めた女のコが妹でありませんようにと、俺も祈りたかった。

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