後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第11章 かつての男
怒っていないからちゃんと説明してと、今の一連の行動の理由を問う。
葉川くんから微笑みが消えている。だから嫌な予感はしているのだが、聞かずにいられなかった。
「先輩が男に絡まれていたから連れ戻しに向かっただけです。ただ──…」
「──…」
「ただ、どこの誰とも知れない男が先輩を『季里』と名前で呼んでいるのを見て……いい気分ではありませんでしたね」
「あ…あのね、彼は、私の」
「元カレですか」
「……っ」
葉川くんは私と啓輔の関係を見抜き
…それで尚、見抜いたうえで割り入ってきたのだと言う。
「 " もと " の立場で先輩を引き止めるだなんて見苦しい男ですね」
「……いちおう昔 付き合っていた相手だから、悪く言われると複雑だわ」
「仕方がないです。一度は先輩を捕まえておきながらまんまと手放すような──…そんなバカな男を、良く思えというほうが無理ですね」
「…っ…君らしくないわね、その言い方…」
「…フ、確かに」
口許は変えず、鼻先で笑う。
苛立ちすら垣間見せる彼の横顔を──
そんなわけないと、私は胸の内で否定した。