後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第12章 変われない
勢いよくぶつかって…さらに転けそうだったという緊張から、私はすぐに逃げられないでいた。
「わざとぶつかったわね……!!」
「はい。でもこける前に僕が抱き留めたので問題ないですよね」
私は十分に問題ありだと思うのだが、葉川くんに言われるとこちらの常識が間違っていたのかと不安になってくる。
それくらい彼の顔にも声にも反省の色がなかった。
「それに…なに?どうして葉川くんがいるの?」
事務所から徒歩十分のこの駅に偶然現れることはないだろう。葉川くんは電車通勤でないのだし。
まさか尾行されて…!?
「やることを終わらせたので駅で待ち伏せしていました。明日先輩に見せる設計案の用意はできているので、ご心配なく」
「君に関してそういう心配はしないけど…っ」
「──…まぁ少し、やっていることがストーカーじみているとは思いましたが」
「……っ」
啓輔といい葉川くんといい…
自覚があるのに何故こういうことをするのかしら。
今どき電話ひとつで用件も伝えられるし、待ち合わせだって簡単にできる時代なのに。