後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第14章 消去と諦め
その時、ベッドの葉川くんがむくりと起き上がった。
ハキハキとしない掠れた声で、柄にもなく目をこすっている。
珍しいものを前に私は、スマホの画面を凝視していた顔を上げた。
「おはよう」
「…起床時間にしては…少し早すぎませんか」
「そのとおりね」
夜明け前。
窓からは外の暗さが伺えて、いつも電線に止まっているスズメさえその姿を見せていないのだから、葉川くんが不服がるのも当然だった。
ホテルのガウンを身に付けた彼は、片足ずつベッドから降りながらもまだ眠そうだ。
「今日は休日じゃないもの。いったん家に帰ってから出勤するわ」
「…どうしてですか? 事務所はすぐ近くですし、わざわざ帰るのは面倒ですよ」
「昨日と同じ服とか、嫌よ」
「事務所に泊まり込みコースが日課の先輩が?」
「それとこれとでは話が違うでしょ」
やっと上がった葉川くんの瞼。
ゆっくりと立ち上がった彼はソファまで近付いてきた。