後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第15章 ドレスコード
私が見ていたのは、葉川くんのポートフォリオに間違いなかった。
ポートフォリオとは建築関係の人間にとって、お見合い写真とよく例えられる物。
自分が過去に設計してきた建物とか、取り組んできたプロジェクトとか
学生なら自分のそれを持って就活をするのが普通だ。
“ つまり葉川くんが藤堂さんに渡したポートフォリオが、これか… ”
私は書類の整理をしばし忘れて、彼のポートフォリオに集中していた。
学生の作品として、優秀な出来ばえ。
奇抜なことはしてないけれど、どれもコンセプトが明確で、プランへの筋道が明瞭だ。
そして、何より
最後のページに書かれた作品が、私の心に引っ掛かった。
「……葉川 くん」
その作品は最後に載せられているくらいだから、他のと比べると完成度が低い。
それに、学生らしい乱暴さがある。
見れば彼がまだ学部3年生の頃の作品らしかった。
なのに、それが私にとって……!
最も心を打ち付けられた、印象的な作品だった。
自身の事をあまり喋らない葉川くんの
謎めいた本性に迫るための、確かな手がかりを見つけた気がした──。
──…