後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第16章 汗と横顔
まぁその言い回しからして、予定通りにいかなかったってことは伝わるわよね。
“ ハァ、本当にあり得ない ”
あり得ないと言うか、許せない。
コンペ締め切りから二日後。芝生公園でTシャツ姿の私は、自分がこの場所に立たされていることの理不尽さについて脳内で作文の最中だ。
「頑張れ! 立花!」
「季里さんファイト~!」
黙ってて。
まだ作文の途中なのよ。
けれど完成をむかえる前に、向こうから走ってくる事務所のバイトくんが肩から襷( タスキ )を外した。
バイトくんはへとへとになっている。
同じ被害者として私は彼に同情した。
そして距離が縮まり、彼は襷を私に差し出す。
不本意なこと甚だしいが、私はしかたなくそれを受け取った。そして──走り出す。
「行ってこい立花ぁ!」
「……。(ダカラ 黙レ)」
エールを贈った藤堂さんに、胸の内で口には出せない悪態をついた私は
他の参加者とともに芝生公園を出ていった。