後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第5章 カラダから始まる
「わかったら弁当食べて早く寝なさい。今日はお疲れ様」
そして彼から視線を外した。
運転席に回り込んでドアを開け、中に座る。
エンジンをかけようとして…
でも、助手席のドアがまだ開いていることに気付いた。
「……!? ねぇ」
「──…」
「閉めてくれないと車を出せないんだけど…!!」
まだ彼はそこから動かない。
意外と強情なのね…
私が溜め息をついた、その時
葉川くんはドアを閉めるどころか再び中に入ってきて、前を向いて座ったのだ。
「ちょっ…!?」
「──…そんな逃げ方、通用しませんよ」
身体は前に向けたまま首だけ傾げるようにして、こちらに顔を向ける。
この時に彼は、それまで浮かべていた微笑みを消し去り、妙に真剣な目で私を射抜いてきた。
このタイミングでそんな表情を見せるなんて…
彼は本当に、策士なのだと痛感する──。