後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第6章 後輩くんの挑戦状
どうも面白くないが、口に含んだ珈琲はそれなりに美味だ。
芳ばしい香り…
私がブラックしか飲まないことも当然のように彼は知っている。
ゆっくりと飲みほした後の空のカップは、私のしかめた顔をぼんやりと底に映し出した。
「飲み終わったカップはベッドの横でいいですよ」
「……」
「先輩もシャワーをどうぞ」
ソファーに腰を下ろした葉川くんは、さりげなく私に背を向けている。
脚を組んだ彼の前のローテーブルには、雑誌「新建築」の最新号が置かれていた。
マグカップを持っていない左手で、彼はパラパラとページをめくる…。
その隙に布団から出た私は当たり前だけど下着も何もつけていない。
けれど彼は雑誌を読んでいるから、朝日のもとにさらけ出された私の裸を見る者は誰もいなかった。
“ 私が恥ずかしがると思ったのかしら ”
こんな時だけ紳士ぶる…
優しいのか計算高いのか、判別のつかない彼の態度だった。