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後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~

第1章 フラレる女



「あ、あの…季里さん…っ」

「いいのよ別に」


悪いことをしたわけでもないのに、気まずそうにしている彼女が居たたまれない。

私は腕時計でちらりと時間を確認した後、鞄から財布を出して席を立った。


「飲み終わったなら、事務所に戻りましょ」

「はい!」


残った紅茶を飲みほして穂花も席を立つ。

身支度をする彼女を置いて私は先に会計に向かった。

私は──後ろの男と目を合わせないように敢えて、視線を高めに振り返り、その男が座っているのであろう席の横を素通りする。

…けれど不思議なもので、通りすぎる自分を相手が見ていることは何となく感じた。

品定めするような、そんな目で。


“ 勝手に笑っていればいいのよ ”


見ず知らずの男に何を思われたところで痛くも痒くもない。

ただ穂花には悪かった。

食事代を奢ろうかと思ったが、それでは彼女がますます気を遣いそうなので、また次の機会にすることにした。









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