テキストサイズ

WーWING

第10章 男の約束

 隼斗の声が聞こえたのか、雲幸はフラフラと立ち上がった。


「おう、そうよ、隼斗、おまえのぉ〜、言うとおりっ!! 立派になった!! 17年前、知人から譲り受けた時は、どうなるか思ったけどな」


「ちょっと……お父さん、それはダメ!!」とあわてて富美子が、口をふさぐ。


「……え?」


 隼斗と、美晴、輝基もキョトンとしている。


 だが、すぐに表情を変えたのが、隼斗だ。


「……なんていった?」


 事の重大さに気がついたのか、富美子は気まずそうな表情で雲幸を見る。


 雲幸も酔いがさめ、一度ゲップを出した。


「お父さん……いま、なんて言ったのさ?」


 詰め寄る隼斗。


 マトリョーシカのように固まった雲幸は「なにもないよ」と、裏声で言った。


「なにもないことないだろっ!! わざとらしいよ、ちゃんと言ってよ!!」


「いや、ちょっと酔ったねぇ。知人から譲り受けた……このテレビは、よく映って……」


「地デジ化の時に換えただろ!! 知ってるよ!! てか、なにこのタイミングで爆弾発言してくれてんだ、クソ坊主!!」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ