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第10章 男の約束

 夏休みに入った。


 受験生にとっては、一番の頑張り時。


 弟の輝基は、遊びに行った。


 高1の夏休みなら、そうだろう。


 妹の美晴はバイト。怪しいバイトをしてないだろうなと心配にはなるが、今は自分の受験のことを考えることにした。


 その晩のこと。


 家族五人が食卓を囲む。


 父の雲幸は、豚しょうが焼きを食べながら、焼酎を飲んでいる。


 テレビのニュース番組で殺人事件の犯人が捕まったと流れると……。


「こんなやつ、そく死刑にして殺したらいいんやっ!!」


 どこがお坊さんなんだ?


 高野山にでも行って、ちゃんとした修行してこいと、隼斗は心の中で言った。


 雲幸は、かなりベロベロに酔っぱらっている。


「お父さん、大丈夫」と母、富美子が冷たいお茶を入れた。


「あっはっはっ、ざけんじゃねえぞっての、今日行った葬式の死んだ婆さんの遺影が、猿に似てるって言っただけで、ボロクソに文句いいやがってよ……ったく」


「そりゃ、文句言うだろ」と隼斗は呟いた。

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