kiss & cry
第10章 xA not REC
---22:30
スタジオから一旦家に戻り、
準備をしてから約束の場所に向かうと
それなりの時間になってしまった。
本当はもっと早く来たかったけど…
どうしても撮影のままのカラダで、
というか潤くんの香りが残るカラダで
相葉くんに会いたくなかった。
携帯のナビが目的地周辺に
辿り着いたことを知らせ、辺りを見回すと
「still…」と書かれた木製の小さな看板があった
重厚感のある扉に手をかけると、
途端に胸がドキドキと鳴り出した。
ふぅーー。と大きく息を吐き、
思い切ってその扉を引くと
カランコロンと軽やかな鈴の音が響いた。
優しげなマスターが
こちらに向けてペコリと一礼をくれる。
「いらっしゃいませ」
仕事が終わってから優に2時間は経ってる。
相葉くんは……
キョロキョロと店内を見回すが
相葉くんらしき姿が見当たらない。
まさかもう帰っちゃった…?
「あの、失礼いたします・・・
もしかして二宮様でいらっしゃいますか…?」
N「あ、はい…そうですけど… 」
「お待ち合わせの方は、こちらです…」
ついて来てください、と案内されたのは
『staff only』と書かれた扉の向こう。
・・・ロッカールーム?
縦型の個人ロッカーのようなものが
壁際に並び、その反対側には
木製のローテーブル。
そのテーブルをL字に囲むソファの上で
クゥクゥと寝息を立てるのは
まさしく俺を待っているといった張本人。
「…あなたが来るまでに
少々無理なのみかたをしたもので。
タクシー代はお出ししますので、
こいつの家まで送ってやって貰えませんか?」
N「え、いや、俺、
相葉くんの家知らないですし…! 」
「それなら私がタクシーの運転手に
伝えますのでご安心ください。」
いやいやいやいや・・・
色々と急展開過ぎるんですけど…
と、とりあえず、
N「相葉くんとあなたって・・・?」