kiss & cry
第10章 xA not REC
N「え・・・ 」
『"二度と顔も見たくない!"』
頭の中で蘇るあの日の声。
違う…違う違う違う!!!
A「だから、せめて最後にちゃんと謝って、
誠意?、伝えたかった。
自己満足かもしんないけど…
しつこく電話もラインもして
怖がらせちゃってごめんね?」
なんだよそれ・・・。
もう会わないようにするからって伝えるために
わざわざ呼んだってこと?
A「あ、タクシー呼ぶから!
あとちょっとだけ、…ここで待ってて?」
N「・・・。」
『"今度また是非、雅紀とふたりで
飲みに来てくださいね"』
N「・・・相葉くんは…、」
A「え? 」
N「相葉くんは、」
A「…なに?」
N「・・・・・なんでもない。
タクシー、下で待つね。お茶漬けありがとう。」
相葉くんの横を足早に通り過ぎて、
玄関の扉を乱暴に開けて飛び出した。
扉が閉まる直前に相葉くんがなにか言った気がしたけど
そのままエレベーターに乗って一階を目指した。
エントランスを抜けると、もうタクシーが到着していて
こんな時ばかりは物事がスムーズに進むんだなって
妙に冷めた頭で、ぼんやりそんなことを思っていた。
発進する直前。
何を期待してか後ろを振り向いて見たけれど、
そこにいてほしい人はいなかった。
『相葉くんは、俺と会えなくなっても平気なの?』
自惚れか、思い上がりか。
どこかで相葉くんは俺のことを
好きでいてくれるんじゃないかなんて。
飲み込んだ言葉を頭の中で繰り返し、
やっぱり言わなくて正解だった、と思った。
*not REC