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　正真正銘の勝利を掴みたいと、健人は思っていた。
　裕子は、たかがじゃんけんのために、あらゆる心理的な考察をし、また策を練っていた。そして、その悉くに健人は負けた。しかし、裏返せば、健人は裕子から、じゃんけんで勝つためのあらゆる法則を学んでいるとも言える。
　それを総動員すれば、運などではなく、実力で勝利を掴むことができるはずだ。
　だから、考えて考えて考え抜いた上で手を決めれば、この戦いには勝つことができるはずだ。祐子から学んだことを無駄にしない。それが、裕子にできる最大限のことだと、健人は思っている。

「それでは、はじめてください」

　と副会長が言った。
「じゃん――」
　学が言った。その表情、体の様子を健人は観察する。
「けん――」
　今度は健人が言った。拳を引く。そして、考え抜いた末の答えを健人は、頭に思い浮かべた。そして、引っ込めた拳をお互いに突き出しながら同時に叫んだ。

「ぽん！」




(了)