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じゃん・けん・ぽん!!

第10章 カウンター発動!!

【カウンター発動!!】

 すでに約束の期限はすぎた。
 前回の生徒会から、一週間が経つ。この一週間の間に、下駄箱を交換してほしいという要望を学校側に申し出る――池田裕子は、前回の生徒会でそう約束したのだった。その期限が、今日までだ。そして今は、すでに放課後だった。〝今日〟は、夜中の十二時まであるが、学校側へ要望を出すならば、教師陣の勤務時間内でなければならない。つまり、放課後になってしまった今、すでに期限は切れていると言ってよかった。

「学校側への提案は」

 冷淡な声が、生徒会室に響いた。すでに全役員が席についており、今はまさに会議の真っ最中だ。
 声は、馬淵学のものだった。なぜか裕子の敵方へ回った学に対して、裕子もまた冷淡に答えた。

「要望は、出していません」

 全員が色めきたった。
 どういうことだ、生徒の半数の意見を無視するのか、怠慢だ――いろんな声が部屋の中に飛び交う。
 しばらくざわめいたが、
「どういうことですか」
 という学の静かな質問の声で、室内は静まった。
 一瞬の沈黙のあと、裕子は答えた。
「もう一つの要望が出たんです」
 そして、鞄の中からひとつの紙束を取り出す。そして椅子から立ち上がりながら、その紙束を頭上に掲げる。
「全教室に空調を設置してほしい――という要望が出ています。この紙束は、それを要望している生徒たちの署名です。人数はおおよそ――」
 全校生徒の半分です――と裕子は最後に言った。
 そして、ちらりと学を見た。
 学は正面を見据えたまま、眉間に皺を寄せていた。それを見た裕子は、なんだか少しだけいい気分になった。
 ふん、と密かに笑ってから、会計に尋ねる。
「下駄箱の交換と空調の配備を両立するとしたら、予算はどう」
 すると会計を担当する生徒は、こめかみを掻きながら悩ましげに答えた。
「空調がどのくらいの値段かはっきりとは分かりませんが、たぶん無理です。採用するなら、どちらか一方だけ、ですね」
 ――成功だ。
 裕子は、密かに拳を握りしめた。名簿に名前を連ねているのは、おもに茶道部、手芸部、チアリーディング部などに所属する生徒たちだ。つまり、女子たちだ。個人的に名前を連ねている生徒たちもいるし、その中には男子の名前もあるが、ほとんどは女子だ。

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