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Our Destination

第8章 激情の渦の中で、輝く君を見た

その後、自分の部屋に帰り、風呂に入っていた
「ふぅ…」
湯船に少し浸かりながら、今日のことを思い出していた

玲佳ちゃんが俺と同じバンドのファンだったこと、ライブのときは普段見たことがないほど表情豊かに楽しんでいること、あんなにいい顔で激しく煽ってること
その姿を見て、俺は嬉しさしかなかった
こんな玲佳ちゃんを俺は知ってる、仲のいい真希ちゃんですらきっと知らないであろう姿を俺は知ってる
それに同じ趣味があるならもっと話せるし…それに…
「フェスとか誘ったら行ってくれるかな」
思わず独り言として出てしまっていた

あまり話したことのないときから、玲佳ちゃんはきれいで優しい人なんだろうと思ってた
あの一件で仲良くなってからは、優しい部分をたくさん見てきたし、話してて落ち着く
それに、俺のためにあそこまで怒って悲しんでくれて、思うところがあるはずなのにご飯まで作ってくれて、すごくうまくて…

あのときに思ってしまってた
"玲佳ちゃんはきっと他の男にもああやってご飯作るんだろうな…羨ましいし、なんかやだな…"
どうやら口に出してたようだけど、ごまかせた

彼女と別れてすぐなのにこんなこと思うのはダメだし、玲佳ちゃんにも失礼だと思ったけど、あの日思った
"玲佳ちゃんと付き合ってたら俺はもっと楽しく過ごせてたのかな、悲しい思いしなくて済んだのかな"と

でも、今日気持ちが確信に変わった
「俺、玲佳ちゃんのこと好きになったんだな」

そんなことを思いつつもう少しだけ湯船に浸かった

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