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妖魔の憂鬱

第4章 朝田 章市(あさだ しょういち)

時計を見ると順子は、1時間ほどボーッとしていたことが伺える。

「お帰りなさい。
…ごめんなさい。今日は、なんだかボーッとしちゃって、お夕飯の準備がまだなの」
「珍しいね、何か有った?」

今日は義母が、お友達に会って来るので1人分の夕飯の準備をしなくても良いのだが、だからといって…自分達の夕飯の準備や、その他の家事をサボるなんて、自分でも不思議なことだと、順子は困った顔で首を横に振る。

章市は鞄や上着を、順子に手渡しながら廊下を進み、リビングのテーブルの上に在る封筒に気付いた。章市が封筒を手に取り、順子に訪ねた。
「俺宛?」
「さぁ?何かしら?…どこに有ったの?」

何も知らない様子の順子。それもそのはず、ただひとつ『大切な招待状』と言うイメージを除いて、黒羽が順子の記憶を消してしまっていた。

どこかで見た覚えの有る気がした章市は、封筒を開けた。これでもう、作戦は成功したと言っても、過言ではない。

招待状には、夜の魔女リリスが調合した香水が染み込んでいた。この香水の魅力的な香りに誘惑されない者など居ない。

「ボーッとしてしまうなんて
君も疲れてるんだ『夢の古城にご招待』だって、仮装パーティーも有るらしいよ『衣装を貸し出し致します』って…面白そうだ、行ってみよう」

夫婦は何を疑う訳でもなく、宴に行くことを決めた。


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