
高校生だってムラムラする。
第4章 噴出
しばらくの間、私はされるがままに抱き締められていた。涙になってしまうほど張り詰めていた感情が、彼の体温と鼓動で緩んでゆく。
「大丈夫か?」
体を離した黒崎は、やっぱり心配そうにこちらを覗き込んだ。私が黙って頷くのを見ると、安堵したように息をつく。
「ねぇ」
「ん?」
体と体が離れた寂しさが私を襲っていた。呼びかけると同時に、私は彼の手のひらに指を擦り寄せて彼を見つめる。
「もっとくっついてたい」
そう言うと、彼の顔がみるみるうちに真っ赤になった。目は潤んでうろうろと泳ぎ、小さく息を吐く。彼は私の望みの通り、ゆっくりと私の体に腕を回した。
私は俯いて、黒崎の肩の辺りに額をくっつける。やっぱり柔軟剤のいい香り、それとほんの少しだけ、汗の匂い。
それだけで何だかくらくらして、頭の芯がぼうっとなってきた。
「千秋」
ぴくりと体が跳ねて過剰反応をした。私は思わず顔を上げて、彼を見た。その瞳は耐えるように切なげで、怯えにさえ感じられた。
「千秋」
黒崎の薄い唇がまた私の名前を紡ぐ。視線も相まって、胸のあたりがぐっと苦しくなった。
心臓の鼓動を鎮めようと焦るうちに、鼻同士がちょっと当たって、キス。ちゅ、と幼げな音を立てて柔らかな感覚が少し向こうへ。
「……ん」
初めて、自分からキスをした。彼から漏れ出た掠れ声が、妙に私の心をざわつかせる。頬が熱い。何もしていないのに軽く息が上がってきた。
彼の熱い吐息が唇に触れる。耐えられなくて、そのまま押し付けた。
もっと、したい。
そこからは、お互いにたがが外れたように求め合った。
学校でのキスなど比ではない。誰かに見つかるかもしれない、という背徳感に対し、誰にも邪魔はされない、という安心感はまた別の快楽を煽る。
私はキスに夢中になった。柔らかに舌を絡め、ねっとりと口内に触れてゆく。上顎を擦られれば、肩は跳ねて鼻にかかった声が漏れる。悟られてはならぬその場所も、とろとろと濡れて次の刺激を欲しがった。
「ん、ふ……」
「……は、っん……」
それでも舌に吸い付きあったまま、口を離すことは出来なかった。あまりに気持ちが良くて、快感の虜になってしまったようなのだ。
もう溺れそうな程なのに、欲しくて欲しくてたまらない。
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