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え?元アイドルのお従兄ちゃんがわたしのクリフェラ係ですか!?

第13章 兄の想い、弟の想い

 ことの始まりは、夕食後、燈多が夕謡の部屋を訪ねてきたことだった。

「一年振りだし、少し話さないか?」
「いいけど、詩菜のクリフェラがあるから、少ししか話せないよ」
「ああ、構わないよ」

 ソファに少し間をおいて並んで座る。夕謡は兄が差し出したコップを受け取った。中には炭酸飲料が注がれている。
 燈多は自らも飲み物をあおり、少し困ったような表情をした。

「何から話したらいいのか……」

 夕謡は兄が話し出すのを待つ。コップに口をつけ、中身をひとくち飲み込んだ。

「夕謡、おれとしーちゃんは……」
「詩菜が何?」

 燈多は言いよどんだが、やがてこう続けた。

「おれとしーちゃんは、結婚を約束した仲なんだ」

 夕謡は衝撃を受けたが、それを表にはださずあくまで冷静に訊ねた。

「それ、いつの話?」
「おれが七歳、しーちゃんが三歳の頃だよ」

 夕謡はわずかに息を吐いた。そんな夕謡に、燈多が言い募る。

「子供のおままごとだと思うか? それでもおれは、ずっとそれを信じてきた」
「……兄さん」

 夕謡もそうだったが、燈多もまた、これまで詩菜への執着を表にだしたことはなかった。それでも夕謡は同類としての勘か、彼の詩菜への想いに気づいていた。
 だが、これだけは譲れない。

「たとえそうでも、今、詩菜のクリフェラ係は僕だし、詩菜も僕だけを望んでる」
「果たして」

 燈多はそこで言葉を切った。

「果たして本当にそうかな?」

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