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《便利屋》

鳴海乃梨子・２２歳は１０社の面接に落ち半ばやけくそ気味に電話をかけた便利屋に就職したのが１年前になる。

『は〜い、便利屋です』
金持ちの道楽で始めた社長の橘司がワイシャツのボタンをはずしながら電話に出る。

※犬の散歩
※おじいちゃん・おばあちゃんの話し相手
※郵便物を届けたりスーパーへ買い物等自転車でのパシリ
※暑いので夕食のカレー作り
※臨時の家庭教師
※網戸換え
※庭の草むしり
※代理の彼氏・彼女
※泣き止まない子供の相手
――新聞広告に入れたチラシにより庶民的な依頼が平均１日に１０件くらいあり週末ともなれば倍になる。
就活を諦めた・またはもの好きな社員が乃梨子を含め１０人いて男女比は半分半分で２０代〜５０代と幅広い。

年下ではあるが要領のいい後輩の冴子や玲奈は先ほどの依頼を乃梨子に振った。
『社長〜、あたし依頼が入ってて〜』
『私も〜』
そんな彼女らは口を揃えて言うのだ。
『乃梨子さん暇そうだから〜』

――というわけで乃梨子は今日もまた自転車で依頼主に会いに行く。

通勤には個人の自由でスーツでもラフなＴシャツでも許されている。

メガネにみつあみ、
化粧っ気のない彼女の黒髪は額に張り付きＴシャツには汗で下着のラインがわかるそんな暑い日、
依頼は犬の散歩――！

要領のいい後輩は乃梨子に押しつけて。

『はい』
乃梨子は素直にそう言うのだ。