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秘密の楽園 / Produced by ぴの

第6章 秘密の楽園 5

☆m


…!


すぐ目の前に見えるかずの睫毛。


唇には確かに触れる感触があって。


その柔らかさにきゅんとしちゃうけど。


かずの唇が俺のをはむっとしたのを感じて慌ててかずの身体ごと引き剝がした。


「っ、ま、待って…ストーップ!」


かずの手を振りほどき反対に両腕を取れば、簡単に距離を取ることができて。


薄っすらと外の明かりが差し込む部屋の中。


艶やかな瞳をしたかずがやけに小さく感じた。


一方の俺はもう頭ん中ごっちゃごちゃで。


心臓もどっくんどっくん鳴りっぱなしでぶっ壊れる寸前。


え、俺…
今、かずにキスされた…?


キス…?


思わず指で唇を撫でてみたら、指とは違う柔らかいかずの唇の感触が思い出されて。


っ…


動悸がやばい。


いやいや、待って…
ちょっと待ってよ。


かずは弟じゃん!


弟からのキスにこんなに動揺する兄貴なんてどう考えたっておかしいだろっ!


しかも…
少しも嫌じゃなかった…


ちょっときゅんとしちゃってる自分までいたなんて。


これはマジでやばい。


「なんで止めるの…?」


かずの声にハッとして彷徨っていた目線を戻すと、かずは明らかに拗ねた顔をしていて。


ツンと尖った唇に焦点が合ってまたとくんと心臓が煩くなる。


「まーくんがいけないんだよ」

「…え」

「俺はずっと蓋をして閉じ込めてきたのに」


じわりと一層水分量を増した瞳。


あ、泣く…


懐かしい合図を見て無意識に手が伸びた。


だけど。


「…兄弟だろうと、彼女がいようと関係ない」


きゅっと力が入った目元から溢れる雫は一筋もなくて。


ぺしっとはね退けられた手に痛みと呼べないような微かな衝撃。


それに気を取られた隙、どんっと再び身体に重い衝撃が加わり。


「まーくんが好き…」


その切羽詰まった声にかずの言葉の重みまで乗っかってきた気がして。


踏ん張ることもできずにそのままベッドへと沈んでいった。


そして再び落とされるキス。


「まーくん、好き…ずっと好きだったの…」


寝転んだ俺に譫言のようなかずの声が降り注ぐ。

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