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地下アイドルの休日

第1章 フルーティ

品よく騒いでくれるファンがいるフルーティならばステージをやっても一般の客の迷惑になるような大バカ騒ぎをすることもなく、ビアガーデンらしく盛り上がってくれるだろうということで、他のアイドルのステージがなくなった分オファーがきたのだ。

フルーティは昭和や平成初期のカバーを得意とするので、それがまたビアガーデンの雰囲気にもよく合うのかも知れない。

もちろんカバー曲ばかりでなくオリジナル曲もあるのだが、オリジナル曲にはおでんや焼き鳥、焼そば等のB級グルメの歌から、祭りだ神輿だ餅まきだと賑やかな歌、電車や釣りなどの趣味の歌などCMソングっぽい歌が多い。

フルーティの会社の女社長はかつてはCMソングの女王と呼ばれていて、テレビでお馴染みのCMソングのうちの何曲かを手掛けたらしいのだが、フルーティ結成後は彼女の歌がCMソングに使われたことはない。

若いうちは彼女の美貌にダマされてCMソングに起用されたりしたが、お色気攻撃も通用しなくなってCMソングな起用されなくなったともウワサされたりするが、女社長は企業の広報担当が若返ってCMソングの趣味が悪くなったとぼやきながら最近某県内でよく流れる若い女のコたちのアイドルユニットが歌うCMソングを不機嫌そうに聞いていたりする。

それでも、CMソングっぽい曲が続々とフルーティの人気曲になっているのにすっかり気を良くしていて、次はどんな曲を作ろうか楽しみにしているので、当分CMソングっぽい歌の路線は続きそうである。

当の歌い手であるフルーティはCMソング路線を快くは思っておらず、もうやめてほしいというのが本音のところであるが、この女社長は続々とCMソングっぽい歌を作るからまいったものだ。

ちはるんはまだウケて笑ったりするが、あやのんは、もう無理、こんな歌歌えない、あたしたちはお笑い芸人じゃなくてアイドルなのよと拒否反応を強くするのが女社長がCMソングっぽい新曲を作った時のフルーティのリアクションである。

いっそ大コケをして酷評でも浴びてくれれば女社長も考え直すだろうとも思っているが、フルーティの思惑とは裏腹になぜかフザケた歌たちは人気曲になっていくのであった。

やはりこの女社長はCMソングの女王だったんだなとその奇才は痛感するし、歌い手であるフルーティの歌唱やパフォーマンス力もスゴいといえる。

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