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『untitled』

第3章 一線を、越える

みんなから送られてくるメッセージを一人、部屋で読む。

みんな、そんなに心配だったんだなって思うくらい返信が早い、早い。

「今日は松ヂュンの勝ちか…」

そう言えば、今日だった。

ニノが木村くんとご飯に行く日は。

なんだかんだで、すっかり忘れてたな。

あいつも昨日、何も言わなかったし。

空になったグラスにビールを注ぐ。

今日のアテはポテトチップス。

結構前にニノをみんなで可愛がったときに相葉ちゃんが買ってきたのが残ってた。

「うわっ、こぼれてる…」

指についたポテチを舐めててふと見たら服の上にめちゃくちゃ、こぼれてた。

「ニノに怒られるなぁ…」

ニノが顔を赤くしてキャンキャン吠える姿を思い浮かべる。

いつからか、ニノが好きだった。

それに気がついたときに、みんながニノを見てることに気がついた。

あとから聞くと、俺は自分の気持ちに気がつくのも相当、遅かったみたいで。

みんなに、今さら?って。そんなの分かってたよ、って。

そして、ニノも同じだった。

ニノも俺たちを見てた。

想いを打ち明けた日のことを今でも思い出す。

これで良かったのかって考えた日もあった。

だけど、これが俺たちなんだ。

俺たちが造り上げてきた5角形なんだ。

「翔ちゃんもやるな…」

こういう気の使い方が出来るのは翔ちゃんで。

「相葉ちゃんには渡さねぇよ」

相葉ちゃんのスタンプに笑いが込み上げてくる。

にしても…松潤の腕枕でスヤスヤ眠るニノの姿。

込み上げてきてた笑いとは違うものが身体の中を駆け巡る。

「寝れねぇじゃん…」

どうせ、まだ眠れないんだからと思いテレビをつけた。

ちょうど来週の番組の予告CMが流れた。

「こいつ…」

私服姿でバスに乗り込むニノの姿。

いつもの上目遣いで木村くんを見つめる。

細い二の腕、細い脚、それにVネックなんか着てる。

鎖骨がもろに見えてやがる。

だから、首はダメって言ったのか…

みんな、ニノがこんな姿を木村くん相手に再び晒していることはすでに知っているだろう。

あとは俺の一言を待ってるんだ。

メッセージを打つ。

【お仕置きだな】

俺の送ったメッセージの横にすぐに既読3が表示された。




おわり

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