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『untitled』

第5章 赤いシクラメン

翔をゆっくりベットに倒すと、再びかけていた銀縁メガネを取った。

「翔」

「潤」

首に手を回すと俺は引き寄せられてそのまま唇が重なった。

「好きだよ」

「ホントに?」

「翔だけだよ、こんなに愛しいと思えるのは……」

恋人の時間は少しでも翔の不安を取り除くために、目一杯愛でるって決めた。

相も変わらず俺の恋人のポジションを狙うヤツは後を絶たない。

それは売名だったり。

本当に恋人になりたかったり。

でも俺はそんなヤツらに一生靡くことは無いだろう。

「翔だけだから」

「俺も……潤しかいない」

トルルッ…トルルッ…

再び唇を重ねようとしたら、翔のスマホが鳴って慌てて飛び起きる。

「……えっ?」

普通ならすぐに電話に出るのに、画面と睨めっこする翔。

「どうした?」

「これ……」

翔が見せてくる画面に表示されるのは『二宮』という名前。

「何かあったのかな?」

悩んでいる間に鳴っていたコールは止まる。

トルルッ…トルルッ…

すると今度は俺のスマホが鳴った。

「……はぁ?」

俺の画面には『相葉』という名前。

「やっぱり何かあったんじゃない?」

翔も画面を見つめ心配そうにするから電話に出た。

「もしもし」

『あっ、出たよ!出たよ!』

嬉しそうに誰かに伝える声に危機的状況ではないと安堵したが、その分俺らの大切な時間を無駄にした気がしてイラッとする。

「おい。早く、用件言え」

『うーんとね、ニノちゃんちに行こうと思ったんだけど、やっぱりそっちいっていい?』

「はぁぁぁ?」

『「ちょっと止めなって!」いやね、俺らも先輩に色々とアドバイス欲しくってさ。今から行くんでよろしくねー!』

「おいっ、ちょっ……」

用件だけ伝えると一方的に電話を切りやがった。

「どうしたの?」

「今から来るって……もう、マジ何なんだよ!」

「ふふっ、まぁいいんじゃない?」

イライラする俺とは正反対に翔は寛大に2人を受け入れるつもりみたい。

「これからここを使う機会があっちも増えるんだから……きちっと交渉しないとね?」

いつの間にかかけていた銀縁メガネをぐいっと上げるとニヤっと笑った。


意外にも交渉が難航するのはまだ先の……話。


俺も雅紀もいいマネージャー、そしていい恋人を見つけられたよな?


【end】




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