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『untitled』

第7章 青春18きっぷ - story Ⅱ-

【相葉side】


「じゃあね、潤」

「おう、また明日な~!」

野球バックを肩にかけ直し、階段を下りていく。

「よし、俺も行くか!」

フーッと息を吐いて早まる鼓動を落ち着かせると、ゆっくりと階段を上る。

やっと……ニノちゃん先輩に逢える。

可愛いから、いつの間にか心の中でちゃん付けで呼んでいる。

そして今日は待ちに待った部活動初日。

朝から浮かれ気分で授業中も上の空で案の定、先生に怒られたけどそんなの屁でもない。

よし、着いた。

ここにニノちゃん先輩が……

最初が肝心、しっかり挨拶しないと。

グッと手を握りしめて気合いを入れると、目の前のドアをノックする。

「失礼しますっ!情報処理部に……入部させてくださいっ!」

俺の声が響き渡ったあとに訪れた沈黙。

あれ?

想像していた反応じゃない。

歓迎とは程遠い冷たい視線と空気をヒシヒシと感じる。

恐る恐る顔だけ上げると、視線は一瞬で俺からパソコンへと移った。

「ぷはっ……ホント面白いね、キミ」

こっちも想像していた反応じゃなかったけど、ようやく声をかけてくれた人。

先輩……かな?

「俺は櫻井翔。3年だから夏までだけど……宜しくね?」

「はい、よろしくお願いします!」

他の人と同じ様にメガネをかけているけど、ガリ勉タイプではない。

うん、たぶん仲良くできる気がする。

差し出された手をギュッと握って握手した。

「あっちにいるのは顧問の大野先生。まぁ、あんな感じだからいてもいなくても気にしないで」

結構なボリュームで挨拶したはずだけど、教室の隅っこでコクリコクリとうたた寝をしている。

人畜無害……って感じ?

「コイツの事は……説明不要だよな?」

グイッと肩を櫻井先輩に抱き寄せられたのは、紛れもなく俺が会いたかった人。

「はぁ……マジかよ」

でも歓迎とは程遠い、項垂れたニノちゃん先輩の姿だった。

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