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ぜんぶ俺の物〜ケダモノ弟の危険な独占欲〜

第1章 1


『イッた?』
その言葉の意味すら私は知らなかった。ようやく亜貴の行為が止まった。私の様子を確認するとパジャマを着せ直し、頬に軽いキスをする。
高みへ追いやるだけ追いやって、彼はそのまま部屋を出ていった。


翌朝、一階のダイニングに何食わぬ顔で朝食を食べる亜貴がいた。私は「おはよう」の挨拶すらできなかった。目も合わさず、黙々と御飯を口に運ぶ。
ぼーっと朝のラジオの音声を聞き流しながら、それとなく亜貴を観察した。亜貴はすでにリビングに移動していて、いつものように月とゲームをしていた。
二人して子供のようにテレビの前で寝そべって、勝敗に一喜一憂しながら歓声を上げる。なんとも微笑ましい兄弟の姿がそこにある。
(私は何なんだろう)
亜貴への疑問は深まるばかりだった。
私は姉なのか、女なのか。
仲間なのか、部外者なのか。
亜貴は私をどう思っているのか。
その答えは、一つも分からない。

亜貴とのぎこちない距離感は二週間続いた。私が避けているせいか、亜貴の態度も不自然だった。互いを腫れもののように扱い、なるべく触れないようにして過ごしていた。
でも、今度こそ関係は終わるのではないか。そう思うとホッとする反面、後悔もした。私があんなことをしなければ、少なくとも表面上は、仲の良い姉弟でいられただろう。亜貴への疑問は何一つ解決しないまま、関係だけが悪化してしまった。
きっと亜貴はもう、私の部屋に来ない。
(だから、なんなの……?)

自分の気持ちが分からない。
亜貴の気持ちも分からない。
亜貴の目に、私はどんな風に映っているのだろう。姉というだけで、ここまで執着するのはなぜなのか。
知りたかった。その答えがどうしても。

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