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子供じゃない…上司に大人にされ溺愛されてます

第8章 本当に好きな人



この話はみんなには内緒だって、言われたんだった。



今日は休日だから、誠也さんはぐっすり眠っているみたいだ。

何とか誠也さんの体から抜け出て、台所に行き、朝食の用意をする。


昨日の夕食のポトフが残っているし、後は卵焼きを多めに作ろうかな?

チーズオムレツもいいかも……。



そんなことを考えてると、誠也さんがあたしの姿を探して、

台所にいるのに気付いて、ほっとしたように、くしゃりと笑った。


……時々、誠也さんは不安そうに、あたしの姿を探すことがある。


「……愛莉」


確認するように、ぎゅっと抱きしめられて、その手が少し震えてるのに気付いた。

嫌な夢を見たのだろうか?


不安にさせるくらいなら、一緒にまだ寝ていたら良かったのに。

そんなことを後悔しながら、愛しい人を抱きしめる。

「ずっとこんな幸せが、続けばいいのに、幸せな日が続くと、恐くなるんだ、……おかしいかな?」


やっぱり嫌な夢でも、みたんだろうか?



――――考えてみれば、あたしは誠也さんのことを、ろくに知らないかもしれない。

例えば昔はバリバリのデザイナーだったこと、会社の資料室で、

誠也さんの手掛けた作品を見て、胸をうたれた。

いくつもの賞を取っているのに、部屋の中にはそんなことなかったかのようで、

トロフィーも何も飾られてない。



それからスランプに陥ったこと。

会社では色々な噂を耳にした。

女性がらみだとか、デザインした作品が盗まれたとか、

昔いたデザイナーに騙されたとか……。



ろくな噂はなく、過去なんて関係ないと、無視していたけど。

……こんな不安そうな誠也さんの姿を見ると、そうも言ってられないと、

思ってしまった。


誠也さんの震える体を抱きしめて、暫く背中を撫でていた。



……辛い過去を抱えているのなら、取り払ってあげたい。

過去もひっくるめて、全てを愛したい。


そう思うのはおかしいのだろうか?
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