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『ま゜』

第3章 魔界街→パックサン

 山野家。

 慌てた表情で、階段をかけ降りる紗知。

「お父さん、大変! 水戸さんが、水戸さんが……」

「どうした?」

 縁側で足の皮を剥きながら、父、羊(よう)が答える。

「大変だよ、部屋で水戸さんとゲームをしようとしたら、突然、消えちゃったんだよ」

「なんだよ、そのくらいでギャーギャー騒ぐんじゃないよ。慣れてしまえば、水戸さんの耳からムカデが出るようなもんでも、別に道ばたに小石が落ちてる程度にしか感じなくなるよ。突然、消えるくらいのもんは、夏の朝にセミの幼虫見つけるくらいのレベルだよ」

「うん……なんかよくわからないけど……そうなの? でもいないんだよ?」

「そこにいるじゃないか」と羊が、指を差す。

 そこにいたのは、セグウェイタイプのメカ水戸さんだった。

「……そうね」と紗知も納得した。

 メカ水戸さんは、リビングでテレビを見ていた。

 放送しているのは、ワイドショーだ。清楚な女性アナウンサーが神妙な顔付きで、ニュースを読んでいる。


『また、突然、子供が失踪する事件がおこりました。○○県の4件に続き、△△府でもあらたに3件起こりました。自室でいなくなった子供達。警察は、何者かによる連続誘拐事件として捜査を進めていますが……』

 直立したまま、テレビを眺めるメカ水戸さん。

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