テキストサイズ

本気になんかならない

第25章 春雷

「俺、好きな人がいるんだ。
なのに、入ったらきっと……」

俺はどう説明しようかと迷うけど
かじかむ口先がうまく回らなくて
生々しいことをはっきり言いたくなくて
短い沈黙で飛ばした。

「せっかく俺に好意をくれる小浜さんに
そんなふがいない俺を見せたくない。

好きになってくれて、ありがとう。
だからちゃんと送る」

そう言うと、俺と左右に視線をさ迷わせ
何か問いたげではあったけど、
そのうちに結んだ口角をあげ

可愛らしく微笑んだ。

「…ありがとう、宮石君。がんばってね?」

え?何を?
ま、お礼は言っておこう。

「ありがとう」

間もなく、キッと俺たちの前に停まったクルマ。
俺に宮石家の証を見せて、後部ドアを開ける。

座席の上には大小のタオルが置いてあって
1セットを小浜さんに渡した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ