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本気になんかならない

第26章 趣味:和歌

すくっと立った副部長は、脇の柱をガンっと叩く。

「それで、どうなのよ?
このディスカッションの結果を、企画長に提出しなきゃいけないのよ。
なのに、ふたりともどうでもいいって思ってるでしょ…はぁ」

ほかにメンバーいないの?
佐倉は副部長が心配で入ったんだろうし、
俺は佐倉に引っぱられて、まだ仮部員だし。

「だって、わからんもんはわからん」と佐倉。

だよなー。

やる気、薄の生徒ふたりを前に、副部長先生はあきらめない様子で言う。

「定家君の一首※だって
私には先立った式子さんに宛てて
”幽霊でもいいから会いたい”って意味に思えるのよ」

「それを書いて出しとけよ」

ひらひらと手を振る佐倉を一瞥後、
副部長は俺に顔を向けた。

「宮石君は、どっち?
定家君は式子さんの秘密の恋人?
それとも単純に恩師の息子?※」

居ないかのように影を潜めていたんだけど、やっぱりまわってきたか…。
さっき俺がなにげに思った定家一方通行説なんて、バックボーンなさすぎて出せないからなぁ。
ここは、『玉の緒よ』は言及せずにいこうと、俺は考えた。


※『来ぬ人を まつほの裏の 夕なぎに
焼くや藻塩の 身もこがれつつ

(待っても待ってもあなたは来ないけど、ずっとあなたを想っています
…定家が女性の立場にたって詠んだとされる和歌)』

※式子内親王は、藤原俊成(定家の父)に和歌を学びました。

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