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本気になんかならない

第28章 green flowers

そりゃ俺もセフレではないって思いたかったけど
北里とこの男の会話で、そんなふしがあったんだよな。
なのに思いだそうにも、数年前の細かい会話なんて覚えてなくて。

うーん、本当に音楽仲間なだけな気もしてきた…。
あれは、何かの間違いだったのかな…?

「誤解、とけた?
ほかにも聞きたいこと、ある?」

それに、この男に一途な紳士の証明なんて求めても無意味っぽい。
と思った俺は質問を変える。

「北里、元気ですか?」

「うん、こないだ会ったとき、元気そうだった。
そこの大学の学祭に行ったんだよ。
貴志君の。もしかして和君もそこ?

そうか。
あそこは学生の本気度がすごくて楽しいよね。

そいえばさぁ
なんか黄泉の国みたいな部屋に連れてかれて、小一時間、動かなかったな」

黄泉の国?オカルト研究会かな。
北里って、そういうの好きだったっけ?

「去年までそのサークルに顔だしてたんだって。
涙目で懐かしんでた。
俺は途中で抜けたのに、戻るまでずっとそこに居たみたいだし」

黄泉の国って、和歌のサークルのこと?
どこをどうしたらそうなるんだろ。。

…ま、いいや。

だけど北里、大丈夫かな?

「仕事がキツイんでしょうか?」

「仕事?まあまあらしいよ?
好きで選んだ職場だし、がんばるって言ってた。
別段、痩せても太ってもなかったし」

まあまあ?
だけど、元気そうなのに涙目って、
どういうことだよ……。

そこまで過去に思いを馳せるってことは、
現在がつらいってことじゃないの?

この際、この男に連絡先を聞こうと、俺は身を乗りだした。

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