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本気になんかならない

第28章 green flowers

貴志の声で目が覚める。

「おい、起きろよ」

「え?あ…今、何時?あれ?
俺、アラームいつもつけてるのに」

脇にあった自分のスマホに手をのばして確認していたところ、和史さんが言う。

「騒がしいから俺が0.05秒で止めてやった。
はい、朝メシ、できてるぞ」

「…いただきます。豪勢ですね」

フローリングに雑魚寝状態だったらしく、腰が痛いながら、ぼーっとした頭でオムライスを食べて。
出立前に和史さんへ頭をさげる。

「昨夜はありがとうございます。
おかげで俺、一歩前進できました」

夢に彼女も現れたし。

「ああ。トイレはキレイに使わなきゃね」

「え?」

彼女の香りを思いかえしていた俺、汚したっけ?と一瞬焦る。

「和君も狙っちゃうタチ?
あれ、ナイスアイデア。

あの的シール貼る前は、結構ヒドくてさ。
俺、足元に観音様か動く眼球でもはめこんでやろうかと思ったし」

「そんなトイレ、怖いですよ…」

朝っぱらから…どういうわけか話が、
男子トイレの実情※にすり替わっていた。

そして、昼の弁当を貰って、店を出た。

あれ?そういえば、
さっきスマホをポケットに入れたとき抵抗なかったな…と、手を突っこむ。

昨日入れたはずの写真はなくなっていて。
奪いかえされたか。
燃しときゃよかった……。


※男子トイレには、とある事情により『もう一歩前へ』というステッカー等が貼られていたりします。

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