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本気になんかならない

第30章 初デート

クルマから出て、並んで歩くのは、
ロイヤルカラーのオーナメントが飾られて
脇の教会から讃美歌が静かに流れる
クリスマス目前のプロムナード。

俺は、ローヒールの彼女の足元に気をとられながら歩く。

「こないだは、熱い和君を見られておもしろかった」

やっぱり彼女は、俺の気持ちなんておかまいなしに楽しげに話す。

「いつもはあんなに短気じゃないよ」

まあ、ここ最近の自分の挙動には正直
俺自身も驚いている。
俺って比較的温厚だと思っていたのに、自分で調整がつかない感情がのしあがってくることがあって。
しかも、それが嫌でもなくて。

「そうよね。どっちかっていうと、おっとりしてるよね」

「北里もだよ。校長にお茶、かけるなんて」

「和君兄弟のこと、侮辱するの許せないもの。
帆澄君にしたってあんなの、どっかのひねくれ坊主からのガセネタよ」

「俺たちのために怒ってくれたんだな…ありがとう。
だけど、もうあんなことするなよ?
俺がいなかったら、逆に北里が危なくなってたかもしれないんだから」

俺は、遠く離れたあなたを守れないんだから。
あなたを守る男は、別にいるんだから。

「そうね、ありがとう」

しおらしく、そっと頭をさげる北里が可愛いくて
となると、手をつなぎたいと欲する俺。

あのふわっとした手に触れて
指先まで彼女を包んで
熱をふたり、わけあって。

そんなこと考えるのはきっと、今が冬だから。。

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