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本気になんかならない

第30章 初デート

俺たちはクリスマスキャロルをバックに、駐車場までの道をゆっくり歩く。
道すがら、雑貨屋や楽器屋を覗いて。

楽しそうにコロコロと喋る北里に、俺もついつい夢中になって話しかえしていた。

そして、クルマが見えてきて
会話がふいに途絶えて、

現実に引きもどされる。


俺は、避けたくはあったけど
ずっと気になっていた話題を持ちかけた。

「いつ頃、生まれる予定なの?」

「今月。雪、降るかなぁ。
雪の降る日に生まれた子は、明るい子っていうでしょ?」

今月?ってことは、今は臨月?

「え?それは知らないけど…なのにまだ出勤してるの?」

ときに、今日は早退だったのか?
高校教師の彼女が午前中のうちに職場から自宅に帰るなんて、おかしい
って今になって思った。

「ううん。産休中よ?
今日は出しわすれの書類を持ってきただけなの」

「そうだったんだ。ええっ?
こんなとこにいて大丈夫?」

「今のとこ、切羽詰まってないから。
私、初産だから、そんなにすぐに来ないって。
それに、安静にし過ぎてもよくないでしょ?」

切羽詰まってからでも間にあうの?
というか、切羽詰まるってどんな状況だ?

「そうなのか?だけど、そのための産休だろ?
もう冷えてきたから即帰ろ」

昼食後の散歩には、もう充分歩いた気がする。
だってもう、いつのまにか16時前…
バイトには余裕で間にあう時間だけど。

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