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本気になんかならない

第30章 初デート

「可愛い」

北里から涙とともに笑みが漏れ、
俺も緊張がゆるんで一息吐く。

「私の赤ちゃん…」

こんな小さな、だけどまぎれもない生命が
北里の身体に入っていたんだな。。

大きなお腹を見ていたのに
未だに信じられないというか

すごく神秘的で

さっきまでの熱戦が
落ちついてきたこともあってか

乗りこえた北里を
素直に祝福できた。


「じゃあ、身体をキレイに洗って
診察してもらってきますね。
ママ、パパ、またあとでね」

赤ちゃんが別室に連れていかれて

だけど、まだ北里には医者がついていて
縫合とか、後産とかスタッフ同士で言ってて

横になったまま
そのうちに俺をじっと見つめる北里の
額の汗を、も一度拭いて

「俺、居ても?」

尋ねる俺に北里の手が伸びて

「居て……」

ふたり、どちらも汗でぐしょ濡れの
手を握りあった。

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