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本気になんかならない

第31章 スクロール

すると、千尋さんが俺をじっと見つめながら、近づいてきた。
そして、不可解なことを話しだす。

「違うよ。濡れるから立って?
そうじゃなくてさ、結婚するんだろ?」

「え?……結婚、、って俺がですか?」

「そう。まだしないの?」

まだ、って俺は学生で、
それ以前に結婚する相手もいないんだけど…。

千尋さんも俺に彼女なんていないこと、知ってるよな。。

どこからそんな話が降ってきたのかと
言葉をなくす俺に、千尋さんは続ける。

「そりゃ、和君はよく働くし、続けてほしいよ?
だけどここじゃ、正社員なんて雇えない。

……それでもここでバイトしたい?
ここの稼ぎじゃ、妻子に顔向けできないだろ?」

……俺には、結婚前に妻子が居る設定?
俺、誰かと間違われてる?
千尋さん、雪かきし過ぎて蜃気楼見ちゃってる?

「妻子、ですか?」

「そう、妻と子ども。まだ秘密?」

千尋さんと俺は、首をわずかに傾けあった。

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