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本気になんかならない

第31章 スクロール

貴志と俺は、近くの自販機で飲み物を買う。
そこで出会った男に、彼女募集中ならクリスマス駆けこみ合コンに出ないかと持ちかけられて、ともに断った。
そしてふたたび、教室に戻る。

「じゃあ、今年も年末は一緒にバイトだな。
隠れてしあわせになってんなよ?」
と、冗談っぽく貴志は言う。

「そっちこそ。
それに俺は貴志が友だちでいてくれたら、すでにしあわせだよ?」

「ははっ…宮石、俺はな。
そんなこと真顔で言うお前が好きだな。
うん、大好きだぞ」

「なんだよ?
そんなセリフは好きなコに言えっての」

「言ったんだけどね…」

相手にされなかったのか。
それはつらいな。

「そっか。頑張ったな。。」

想いが届かなくてつらいのは、
俺だけじゃないんだな。
平気そうに見えても、みんなうちに
秘めてがんばってるんだ。

俺だけじゃない。
そういえば……。

午後からの授業に向けて人が集まりだした教室で喉を潤しながら、ふと思いだしたことを尋ねてみた。

「なぁ。貴志は片想いのコが寝てたら、
キスしたくなる?」

「ーーーっ!」

彼は、飲んでいた紙パックのイチゴ牛乳を口から勢いよく吹きだした。

経験アリか。
よかった、俺だけが異常なんじゃなくて。。

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