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本気になんかならない

第36章 夜は恋蛍

自己紹介を終えてから、彼に尋ねる。

「バイオリン、うまいのね。習ってるの?」

「うまくないよ。
テナーのそっちのが断然うまいし、拍手もすごかった」

名前を教えあったのに、"そっち"って、微妙な距離感…。
さっき身体をあわせたばかりだっていうのに。

もっと、うち解けてもらいたい。

そう思った私は、彼に肩を寄せてセリフを選ぶ。

「ああ、あれはね。みんな、あなたに圧倒されたのよ。拍手するタイミングに感動中だったの。

私、ちょっぴり悔しかったな。あの曲をバイオリンであそこまで酔わせるなんて。
すっごくカッコよかったよ、和君」

意識して名前を呼んでみる。

「北里さんにそんなに褒められるとは思わなかった」

"そっち"から"北里さん"に変わったけど、それってどうなのよ?

「ねぇ、呼びすてでいいのよ?」

「え…。。じゃあ、北里…」

苗字かい…。

だけど、それのほうがいいかもね。

下の名前でなんて呼ばれたら私、目がたちまち、きゅるるんハートになっちゃいそうなんだもの。

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