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本気になんかならない

第39章 幸せ所有格

一方の兄は、ぶすっとし続けていて、私の胸のざわざわがおさまらない。

「プロポーズって…向こうは、紗波のこと知ってるのか?」

乱暴にグラスをテーブルに置く。

「うん。みんなで家族になろうって…。
出産のときもついていてくれたのよ」

彼がいたから、出産を乗りきれた。
出産前から、私の心は彼に帰っていた。

彼が、紗波の父親っていっても過言じゃないくらい。

彼の遺伝子は入ってなくても、紗波はまぎれもなく私と和君の子どもなのよ。

「俺が病院に着いたときには、いなかったけど?」

「私が眠るまではずっといてくれたもの。
つらくて大変なときに、いてくれたんだから」

「暇だったんだろ」

「そんな言いかた、ひどいっ」

バンっと両手でテーブルをたたき、正面の兄をにらみつけた。

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