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本気になんかならない

第42章 もうひとりの妹

俺たちは、ホールからのびる通路のはしで話す。
通路をそのままいくと階段に、右に曲がると入院病棟につながっている。

両面に大きな窓が張られている広い通路は、明るい木目調で感じがよかった。

「和君が父の店の常連なんて知らなかったわ」

「それは俺のセリフだよ。
もっちーと親戚だなんて知らなかった」

「ごめんね?言ったつもりで忘れてたの」

「あのあと、もっちーとお兄さんが俺の家に来てびっくりした」

「え?兄が?和君の家に行ったの?
何か変なこと、言われなかった?」

「妹がお世話になっていますって。
反対してすまなかったと、仰られていたよ」

「そう、なの…」

あの日、もっちーに連れられてきた男性が、北里の兄だと名乗ったうえで、俺たちの結婚を反対したことに謝罪をされた。

だから、彼女に伝えたいことがある。

通路を通りすぎる人たちが俺たちの会話に興味のないことを確認しつつ、話を続けた。

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