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Linaria

第1章 夢現つ



「ふふ、急にどうしたの」


あやすようにポンポンと背中を叩かれる。
夢で触れられなかった分、今触れている…なんて言ったら笑われるだろうか。


「まだ眠いの?」

「んー…」


グリグリと翔ちゃんの胸元に頭を擦り付ける。
子供みたいに甘える俺に、呆れたように笑いながらも優しく抱きしめ返してくれた。
トクン、トクンと一定のリズムを刻む心音が妙に心地よかった。


「ね、智くん。起きて散歩しながら買い物行こう?」

「ん。翔ちゃん…」

「なに…んっ」


顔を上げて、目の前にある唇に軽いキスをした。
驚いて目を丸くにする翔ちゃんが可愛くて、そのまま何度もしてみた。


「ん、ちょ、ふふっ」


啄むようなキスにくすぐったそうに笑う。
満足してもう一度翔ちゃんの胸に顔をうずめたら、「ほら起きるよ」って無理やり体を起こされた。
腕を引かれるままにリビングのソファへ連れてこられる。


「パンでいい?」

「ん…」


ちょっと待っててね、と腕を離した翔ちゃんをぼーっと見ていた。
なで肩が可愛いな、笑顔も、声も…いい奥さんをもらったな。
そんなことを考えていたら、いつの間にか迫ってきた翔ちゃんにキスをされた。


「!」

「お返し。さっきからぼんやりしすぎ。目覚めた?」


そういたずらっぽく笑って台所へ歩いていった翔ちゃん。
…ああ、本当そういうところ。
きゅう、と胸が鳴ってじんわりと温かい気持ちになる。

二人の休日は、まだ始まったばかり。



-Fin-
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