a faint
第56章 N-25
N’s eye
”月が見たい”
だったのか
”月を見ようか”
だったのか
そう言い出したのはどちらからだったのかなんてコト 今となっては どちらでもいい
太陽の下(もと)より 月の下(した)
燦々と眩(まばゆ)い陽光を浴びるより 煌々と冷めた月光…喜色満面な望月じゃなく 物憂げで気怠そうな二日月が放つ幽(かそけ)な光…が注がれるのが似合う身体を視姦してれば
「……何見てる?」
言外に ”バレてンぞ” と匂わせる声で聞いてくるのへ 綺麗に並んだ背骨のコツコツしたのを人差し指で 突いて なぞって返す
”別に……”
擽(くすぐ)ったそうに捩(よじ)る腰が撓(しな)るのに また唆(そそ)られ そそり勃ち 漲(みなぎ)り 滾(たぎ)る イチモツ
罵(ののし)られるのは百も承知で 果敢にもその細い括(くび)れに手を這わせば
「…エッチ」
淡々と抑揚のない物言いだれど フルリと毛先を巧妙に震わせる辺りが愛(う)い
遠慮するのもなんだし…と さっき抜け出たばかりの窄まりに 指先をツブリと差し込めば 過敏に反応 過激に吸い付き 過分に蠢(うごめ)き 過剰に悶える
爛(ただ)れた感情 絶たれた感傷
姑息な仕草に 加速する劣情
婀娜な肢体に 仇なす淫情
あばずれ 暴けば アバンギャルドで 痘痕(あばた)も笑窪(えくぼ)
セクシー エクスタシー もう どうでもいいし
細いたおやかな首根っこに
(いっその事…)
俺は何を思った? オマエは何を想う?
背中を伝う汗をひと舐めした舌先にまとわりつく塩っぱさに つい顔を顰(しか)めれば 艶やかに微笑(わら)うのがクソ面憎い
天文学的確率の偶然を必然へと 無理くり変換し 捕らまえたこのオトコが奏でる不協和音の その耳触りな音に魅せられて 魅入らせられてる
腰を振れば エロ漫画の効果音みたく ベッドがギシギシ軋んで揺れた
カーテンの端を捲った磨り硝子の向こうに 夜半(よわ)の月が海月(くらげ)みたいにポカリと浮いて 仄かに白む
肩の痣へ口づけ 一つ
淡い吐息と紅く染まる目尻が媚を売って寄越すから その眼に手のひらを翳(かざ)す
この世の常識 あの夜の良識
何処へ行こうか 何処へ向かおうか とりとめのない話を繰り返す
I need your love たったそれだけなのに。